アメリカでは州法によって規定が違うため、死刑が続いている州と、死刑を廃止している州に分かれる。なお連邦では死刑制度を存置している。凶悪犯罪の少ない、裕福なニューイングランド諸州や裕福ではないが治安が安定している北部内陸州において死刑が行われず、貧しい南部諸州では死刑執行数が多い傾向にある。全米では被告人に対する死刑の宣告ならびに死刑執行は減少傾向にあるが、州によっては死刑執行の盛んな州もある。また、未成年に対する殺害を伴わない性犯罪の再犯者への死刑が適用される州法がサウス・カロライナ州、フロリダ州、ルイジアナ州、モンタナ州、オクラホマ州の5州で成立したが、殺人を犯していない性犯罪者に対する死刑適用は過酷であり、憲法違反であると法学者から強く批判されていた。なお連邦最高裁は2008年6月25日に「非道な犯罪であっても、被害者が死んでいない事件で死刑を適用する法律は、残酷な刑罰であり合衆国憲法に違反し無効」という憲法違反判断を下している。そのため、事実上この法律は見直される公算が大きい。
近年の犯罪捜査でDNA検査が導入され、過去に有罪で死刑判決を受けた死刑囚の冤罪が明らかになり、再審で無罪になるケースが多いという。1973年から2001年までにアメリカ国内では96名の死刑囚が釈放されているが、特にフロリダ州では21名も釈放されている。同州では、5名の死刑執行が行われる間に2名が無罪放免になったという。
2007年12月13日に、ニュー・ジャージー州議会が死刑廃止法案を可決し、アメリカ連邦裁判所が1976年に死刑は合憲との判断を下して以降で初めて死刑を廃止した州(実質的には1976年以降停止されていた)になった。同州には死刑囚8名がいたが、全員が「仮釈放のない終身刑」に減刑された。その死刑囚の中には、性犯罪の公表を定めた「ミーガン法」制定のきっかけとなった女児殺害犯も含まれているという。[21]
死刑の適用に際して経済的人種的差別が存在しているとの指摘もある。これは、優秀で報酬の高い弁護士を雇用できるほどの経済力を持つ者が司法取引等で減刑される一方で、比較的貧困層の多いアフリカ系アメリカ人に対する死刑の適用が人口比と比べて多いとの指摘がある。
なお、2008年に死刑執行されたのは37人で、過去14年間で最も少なかった。アメリカでは、1976年に死刑制度が復活して以降、執行数は1999年の98人をピークに減少傾向にあり、死刑の代わりに終身刑を選択するケースが増えている。なお、「薬物による死刑執行が激痛を与える可能性があり、残酷で異常な刑罰を禁じた憲法違反の疑いがある」として訴えた件について、連邦最高裁が2007年9月に審理することを決めてから、2008年4月に合憲判決を出すまで全米で執行が停止していた[22]。
連邦による死刑執行
1995年に発生したオクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(168人殺害)で11の連邦法違反で有罪になったアメリカ人テロリストのティモシー・マクベイに対する薬殺刑による死刑執行が2001年6月11日にインディアナ州テレ・ホート連邦刑務所で行われた。この連邦政府による死刑執行は38年ぶりのことであった。当時のCNNの世論調査によれば8割以上のアメリカ市民が彼の死刑執行に賛成したが、問題になったのが彼の死刑執行の瞬間を全米に散らばっている被害者の遺族800人に見せるため生中継(暗号送信のため、関係者以外は見られないよう配慮されていた)したことであった。これは処刑の立会いに全員が参加出来ないためにとられた措置であったが、このことについては論議になったという。
死刑を廃止している州及び地区
アラスカ州、ハワイ州、メイン州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ロード・アイランド州、ミネソタ州、ノース・ダコタ州、ヴァーモント州、ウェスト・ヴァージニア州、ウィスコンシン州、ニュー・ジャージー州、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)、プエルト・リコ、グアム、北マリアナ諸島、米領ヴァージン諸島、米領サモア
死刑が執行されていない州
ニュー・ヨーク州の裁判所は2004年に死刑を違憲とした。ニュー・ハンプシャー州、カンザス州では1976年以来死刑が執行されていない。
2007年1月、ノース・カロライナ州では死刑制度を実質的に停止せざるをえない状況に追い込まれた。2006年4月、内科医ロベルト・ビルブロなど5人の医師が、医師免許を管轄する権限を持つノース・カロライナ州メディカル・ボード(医療監察委員会)に投書し、「医師が死刑執行に関わるのは『命を救う』という本来の責務に悖る。倫理の観点から医学界として立場を明確にしなければならない」と「死刑執行に関わる医師の役割」についてボードが立場を明確にすることを求めた。2007年1月、ボードは、既にアメリカ医師会が倫理規定で「医師は死刑執行に関わるべきでない」と決めたことを指摘して「反倫理行為は罰する」と立場を明確にし、全員一致で「医師が死刑執行に関わる行為は倫理の観点から許されない。今後、関わった医師は免許取消など処罰対象とする」と結論した。ノース・カロライナ州は州法で「死刑執行に医師を立ち会わせなければならない」と規定しているが、ボードが方針を決定した後、立ち会う医師がいなくなった(州矯正局職員である医師も立ち会いを拒否)。[23]
死刑の執行について再検討が行われる州
イリノイ州において、当時のライアン知事の決断で2004年に州内の確定死刑囚全員が仮釈放無しの終身刑に減刑された。これは2001年1月に死刑執行直前であった死刑囚の冤罪が明らかになり、ライアン知事は「死刑を宣告されたすべての者が本当に罪を犯したと確信できるまで」の措置として死刑執行の停止とともに、死刑制度調査委員会を設置した。2002年4月に委員会が出した報告書は「無実の人間が処刑されないよう保証できる制度の確立はありえない」という結論であった。そのため退任間際の知事は前述のように死刑囚の一括減刑という措置をとった。
これは、確定死刑囚の冤罪が大量に判明したため、司法制度に対する不信が背景にある。その上、メリーランド州など全米のいくつかの州で、死刑制度の廃止が検討されているという。
死刑が適用される州
テキサス州が死刑制度が最も盛んな州として知られている。死刑が復活した1977年以降に全米で執行された死刑のうち、3分の1はテキサス州のものである。現在では、合衆国連邦裁判所で憲法違反判決が出され禁止された、18歳以下の少年犯罪者に対する死刑執行も行われていた。
連邦および全米18州で精神遅滞者に対する死刑を禁止(日本の刑法39条に相当)しているが、テキサス州では禁止されていなかった。そのため、テキサス州議会が精神遅滞者に対する死刑を禁止する法案を2001年に可決したが、州知事によって拒否権が発動したため、施行されなかった。ただし、連邦最高裁が精神遅滞者に対する死刑を「異常な刑罰」として違憲判決を出したため、このような処刑は行われないことが確定した。
なお、各国別の死刑制度の現状については下記ボックスより参照のこと
[隠す]表・話・編・歴世界の死刑
ヨーロッパ フランス・ドイツ・オーストリア・ポーランド・イタリア ・ポルトガル・スペイン・イギリス ・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・バチカン・ロシア
南北アメリカ アメリカ・カナダ・メキシコ
中米・カリブ海沿岸諸国 グアテマラ・ ベリーズ・ キューバ
南米 ペルー
タイム ハンド トリニタ テンシル ファクトリー ふたつ星 はなの舞 ブロイラー スペクタ だっと ラマズダ キーバス 後ろゆび ドラッ エンド もくと トップラ ヒップ トルテ ドーパミン ボケ インタ ファミ テレポ ぱらぴーの タリカ ピューレ カピタン セブサー 春一輪 レイガイド ポット レグルス ロビイ 秘密の花園 コバノ リンワキ ソフトサーチ ムチャコジ オルガン ゲッツ スプーン ランタ しゅいろ うしべに パンパ ブザー ロカール ランダム サブアリ
アジア 日本・韓国・中華人民共和国・ 中華民国・フィリピン・カンボジア・タイ王国・シンガポール
南アジア インド・スリランカ・ネパール・パキスタン・バングラデシュ・ブータン・モルディブ
オセアニア オーストラリア・ニュージーランド・クック諸島
アフリカ 南アフリカ共和国
中東 イラン・イラク・サウジアラビア
参考文献
重松一義『死刑制度必要論』(信山社)
植松正著・日?義博補訂『新刑法教室I総論』(成文堂)
板倉宏『「人権」を問う』(音羽出版)
植松正「死刑廃止論の感傷を嫌う」法律のひろば43巻8号〔1990年〕
井上薫『死刑の理由』(新潮文庫) 永山事件以、死刑確定した43件の犯罪事実と量刑理由について記されたもの。
竹内靖雄『法と正義の経済学』(新潮社)
日垣隆『そして殺人者は野に放たれる』(新潮社)
亀井静香『死刑廃止論』(花伝社)
藤本哲也 『刑事政策概論』 (青林書院)
注釈及び引用
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^ <藤本哲也 『刑事政策概論』 青林書院 126頁
^ 別冊宝島「死刑囚最後の1時間」11頁
^ 別冊宝島「死刑囚最後の1時間」11頁
^ 引用したホームページであるが、残虐性のひどい衝撃的かつグロテスクなものであるため、直接リンクすることは自粛します
^ 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件で死刑判決が確定した宮崎勤が『創』に対して薬殺刑の導入を訴える投書をしている
^ 地下鉄サリン事件の実行犯及び首謀者の麻原彰晃(本名:松本智津夫)は逃亡者2名を除く全員が死刑を求刑されたが、真実を明らかにするのに協力したとして林郁夫だけが無期懲役に減刑されている。
^ 死刑になりたい:なぜ?凶悪事件、犯行動機で供述(下)毎日新聞2008年5月28日配信
^ 母子殺害元少年の「理解不能」発言 「死刑制度認める、でも死刑になりたくない」J-CASTニュース 2008年4月22日閲覧
^ 斉藤信治「刑法総論」41頁
^ 死刑になりたい:なぜ?凶悪事件、犯行動機で供述(下)毎日新聞2008年5月28日配信
^ [1]
^ Death Sentences and Executions in 2007Amnesty International website. Retrieved on 2008-05-10閲覧
^ 『ギネス世界記録2006』ポプラ社 123頁
^ 朝日新聞 1988年2月24日
^ 「ロシアの死刑廃止を求め欧州から圧力」 モスクワIPS(Inter press service)、2006年7月21日。
^ <死刑>人道的な配慮、「銃殺」から「薬物注射」に全面切り替えへ 2008年3月2日付配信 Record China
^ 藤本哲也 『刑事政策概論』 青林書院 131頁
^ 朝日新聞 2007年11月27日
^ 朝日新聞2007年2月25日
^ 。死刑執行6割がテキサス州 米で広がる死刑格差2008年3月5日閲覧